ラポール



ラポール (rapport) とは
臨床心理学の用語で、
セラピストとクライエントとの間の
心的状態を表します。

もともと、オーストリアの
精神科医メスメルが「動物磁気」に感応した
クライエントとの間に生じた関係を
表現するために用いた語です。

『動物磁気』

という出どころの
怪しい療法から生まれた言葉です。

18世紀後半から19世紀にかけて
検証された療法です。
その頃の科学の考え方で
全否定されました。

しかしながら、催眠療法の源流でもあります。

その後、セラピストとクライエントの間に、
相互を信頼し合い、
安心して自由に振る舞ったり、
感情の交流を行える関係が成立している状態を、
表す語として用いられるようになりました。

NLPにおいては、
ラポールを構築する
テクニックとして、3つあります

1)バックトラッキング
2}ペーシング
3)ミラーリング

一つずつ説明します

1)バックトラッキング
相手の使った言葉を伝え返す方法です。
3つのポイントで伝え返します

a)反復して出る単語や人物
これは話し手の価値や重要人物
であることが多いので、伝え返すポイントです。

b)語尾
語尾は相手の主に使っている五感を表しています。

言い換えると、その人がどの感覚で世界を
経験しているかを表しているので、
語尾を合わせることもポイントです。

c)要約
要約することで、相手の話の
枠組みを共有できます。

それは言葉(メッセージ)を越えて
「私はあなたの話を聞いています」という
『メタメッセージ』にもなります。

2)ペーシング
話し手(クライアント)の経験構造に合わせることを言います。

例えば、話し手が早くて高い声で話しているなら、
こちらも同じように早くて高い声で話します。

早くて高い声は映像を見ながら話す人の特徴で、
話し手の感覚に合わせます

3)ミラーリング
話し手のジェスチャーを鏡映しにして動作します。

話し手が指でテーブルをタップしながら話していたら、
こちらも同じようにタップします。
タップする人は、話しながらリズムを取っています。
そのリズムに合わせていきます。

と、ここまでは教科書的な説明です。

が、

ALL NLPでは、
上記のラポール構築テクニックを
教科書通りには教えません。

なぜならば、機能しないからです。

まず、ラポールテクニックの基は
世界的に有名な催眠療法家である
ミルトン・エリクソンの研究の結果です。

催眠療法ですから、話し手の無意識に
働きかけることが重要なのです。

ということから、話し手にバレるような
ラポールテクニックは、
「気持ち悪い」「馬鹿にしている」
などの不満を言われます。

また3つのラポールテクニックは
階層構造があります。
ペーシングがまずあり、
その下位構造として、
バックトラッキングと
ミラーリングがあります。

ペーシングが話し手の経験構造を
合わせることです。
そのために、言語的なペーシングが
バックトラッキングです。
身体動作的なペーシングが
ミラーリングです。

話し手の経験構造を
合わせる意図(ペーシング)をもって
話し手の無意識に
「私とあなたは似ています」という
メタメッセージを込めて、
バックトラッキングと
ミラーリングを行います。

これがALL NLPの
ラポールテクニックの
第1レベルです。

別名「バイオフィードバックレベル」です。

ラポールはもっと深い意味があります。

第2レベルのラポールです。

第1レベルのラポールは、
相手の無意識に
「私たちは似た者同士ですよ」
と言うメタメッセージを込めています。

第2レベルでは、
「話し手の世界観に入る」
と言う意図をもっています。

顕著な違いで言えば、
話し手が右手を上げたら、
鏡映しに左手を上げるのが、
第1レベルです。

第2レベルでは、
話し手が右手を上げたら、
同側の右手を上げます。

右手を上げる事と左手を上げる事は、
脳の使う場所が左右で異なります。
話し手と同じ側の脳の場所を使うことによって
より相手の世界観に入りやすくなります。

また話し手が論理的な思考をしているなら、
聞き手は自分の喉、左耳の上、口元、腕組み、
テレフォンポジション(電話しているポーズ)
を取って、相手の論理的思考の
世界観に入っていきます。

あるいは、話し手が上を向いて、
早口で高い声で話していたら、
話し手の脳内映像を見ながら
話しています。

そんな時は、聞き手もまた
自分の脳内映像を見ながら
話し手の内容を聞きます。

第2レベルを別名「モデリングレベル」と言います

と、ここまではかなり意図的な
ラポール構築テクニックです。

ALL NLPでは第3レベルのラポールからを
重要視します。

ラポールはさらに深い意味があります。

第1レベルのラポールは、
相手の無意識に
「私たちは似た者同士ですよ」
と言うメタメッセージを込めています。

第2レベルでは、
「話し手の世界観に入る」
と言う意図をもっています。

ALL NLPでは
第3レベルのラポールからを
重要視します。

第3レベルでは話し手と聞き手が
「インタラクション」「相互作用」
「対話」「ダイアローグ」
などなど、色々な言い方をします。

が、

話し手と聞き手の間で生成される
(聞き手によって構築されるのではなく)
フィールドから生まれるラポールです。

第3レベルのラポールは
聞き手の意図によっては生成されません。
自発的に生成されるのです

二人(または多数の人々)のフィールドの
叡智によって生成されます。

この時のフィールドとは、
ゲシュタルト心理学でいう所の
『図と地』でいう
『地』に相当します。

『ルビンの盃』という絵を
ご存じだと思います。

二人の人が向かい合っている絵が
フォーカスされると盃の絵が地になります。

盃の絵がフォーカスされると
二人の人が向かい合っている人たちが地になります。

コミュニケーションの内容が『図』になり、
その背景である『地』がフィールドです。

この第3レベルのラポールは
フィールドからのラポールです。

このレベルのラポールは無意識的で、
操作できないからこそ、
より重要なのです。

この第3レベルのラポールの別名が「レゾナンス(共鳴)」です

そしてラポールはさらに
根源的なレベルがあります。

第1レベルのラポールは、
相手の無意識に
「私たちは似た者同士ですよ」
と言うメタメッセージを込めています。

第2レベルでは、
「話し手の世界観に入る」
と言う意図をもっています。

この第3レベルでは
フィールドから生成されるラポールです。

第4レベルでは話し手と聞き手が
「存在する」

という一点においてのラポールです。

第3レベルでは話し手と聞き手の
相互作用によって
フィールドから生成されます。

が、

前提として話し手と聞き手が『存在』しています。

そうでなければ、相互作用さえ起こりません。

これは2300年前から議論され続けた
西洋哲学の『存在論』です。

20世紀の存在論では
「存在」と「存在者」を分けました。

存在論は、西洋哲学の根本問題の一つである

「在るとはどういうこと?」

という問いに対する様々な考えです。

たとえば英語で
1.This car is red.
2.There is a red car.
は同じ「is」というbe動詞を使っていますが、
レベルが異なります。

1.を言うには2.が前提になっています。
1.のisは存在者(car)の属性や特徴を表します。
2.のisは赤い車が「在る」ということを表します。

言い換えると2.が前提されていないと
1.も言えなくなってしまうのです。

そういう意味で存在者よりも
存在の方がより基底部にあり、
同時にメタレベルにあります。

神が居るかどうかを論ずるには、
前提として「居るまたは在る(存在)」ということは
どういうことかを論ずる必要があります。

言い換えると、ここまで話してきたことを
科学的に存在するかどうかを実証すること自体が、
まず「存在」とは何か?
という問いに答えなければなりません。

それは科学には不可能な領域です。

このレベルでのラポールが
第4レベルであり、
最も根源的なラポールです。